夏の末、9月に読みたい5冊。
- 哲志 井上
- 9月2日
- 読了時間: 4分
更新日:9月2日

サマータイムは短い。ゴールデンウィークが終わったあたりから夏のはじまりに胸を躍らせていた気がするけど、気づけばもう9月。そんな濃くてあっというまに過ぎ去る夏の終わりに何を読もう。夏を満喫しきれず最後のかけこみで夏を感じたいあなたへ、さらに短い秋への準備を進めるあなたにも、今月のおすすめの5冊はこれで決まり!
夜は短し歩けよ乙女
夏を満喫するのはまだ間に合う!
友達と行く居酒屋も、いつもの帰り道も、少しだけ視点を変えれば最高にクレイジーな冒険に変わるかもしれない。森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』は、黒髪の乙女に恋する「先輩」が、彼女に「偶然」出会うため、京都の夜を駆け巡る物語だ。物語は、先輩が、夜の京都で、様々な奇妙な出来事に巻き込まれながら、乙女に近づいていく様子を、ユーモラスに、そして幻想的に描いている。古本市の神様、詭弁論部、そして、謎の学園祭。ページをめくるたびに森見登美彦が創り出す奇妙で美しい世界に引き込まれていく。
読み終えた後、きっとあなたは、夜の散歩が少しだけ冒険に感じられるはず。
この物語は、退屈な日常を最高に面白くするヒントを、あなたに教えてくれる。
君と夏が、鉄塔の上
都会の真ん中、コンクリートジャングルにいるのに、孤独を感じる。
そんなあなたにとって、最高にクールな本がある。
この物語の主人公は、学校に馴染めない「僕」。
居場所を探して見つけたのは、人目につかない場所にあって景色が最高な巨大な鉄塔の上だった。でも、そこにはもう一人、「君」がいた。彼女もまた、自分の居場所を探していたのかもしれない。いじめ、家庭の問題、言えない秘密を抱える二人。
この本には、決して表面的ではない、もっと根本的な"居場所"のクールさが詰まっている。
夏が終わる前に、この本を読んで自分だけの秘密の場所を見つけてみてほしい。
夏物語
自分の人生をより深く、掘り下げてみよう。
毎日が同じことの繰り返しで、モヤモヤする。
そんな風に感じてたら、この本を開いてほしい。
川上未映子さんの『夏物語』は、現代を生きる女性たちが、自分だけの「人生」を掴もうと奮闘する物語だ。作家として生きる主人公・夏子は、家族や、新しい命との向き合い方を模索していく。この小説の最大の魅力はその強烈な言葉の力。生々しいほどリアルな言葉が、女として、人として生きることの痛みを、そして希望を鮮やかに描き出す。都会の喧騒の中、自分と向き合う勇気をくれる一冊。この夏、この本で人生を、もっと深く、もっと本質的に見つめ直してみよう。
風の歌を聴け
夏が終わるって、少し切ない。
でも、その切なさこそが、僕たちの人生を特別なものにしてくれる。
村上春樹の『風の歌を聴け』は、そんな夏の終わりを切り取った、最高にクールな物語だ。
主人公の「僕」は、夏の終わりに故郷の街に戻ってくる。そこで、指が4本しかない、どこか謎めいた女の子と出会う。二人は、静かなバーで、そして、夜の海で、静かに言葉を交わす。派手なことは何もない。でも、その一つ一つの瞬間が、僕たちの心を揺さぶる。この物語は、青春の眩しさ、そしてその裏に潜む孤独を、繊細に、そして美しく描き出す。
この夏が終わる前に、あなただけの「風の歌」を聴いてみてほしい。
夏の体温
夏って、やたらとキラキラした季節だと思われがちだけど、そうじゃない。
アスファルトの陽炎が揺れるように、心もぼんやりと揺れ動く。
そんなあなたにこそ、この一冊を手に取ってほしい。瀬尾まいこさんが描く『夏の体温』は、学校に行けなくなった少年と、心に傷を抱えた少女の、静かで熱い青春の記録だ。二人は、誰にも言えない悩みを抱え、お互いの存在が心の支えになっていく。この物語は、セミの声、風の匂い、そして登場人物たちの心の揺らぎを、まるで目の前で起きていることのように繊細に描く。特別なイベントなんてなくても、誰かと心を通わせるだけで、夏はかけがえのないものになる。
残り少ない夏が、あなたの人生を少しだけ変えてくれるかもしれない。
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